除外された犯罪


【対象から外された罪とその理由】

法務省は、399の罪を対象から外した理由を次の8つに分類して説明しています。

けれども、この分類と例示には、重大な疑問があります。

今後、その疑問を順次あげていきたいと思います。

 

※対象となった犯罪はこちら

 

関連記事:除外された罪、なんだかおかしい、とってもおかしい・・・

「共謀罪(テロ等準備罪)」

の対象にならない399
(法務省による分類)

類型

過失犯

業務上過失致死傷等、業務上の過失による危険物の漏出等致死傷など

独立未遂犯

爆発物使用未遂など

結果的加重犯

建造物等延焼、強姦致死傷など

条約上の義務無し

内乱、爆発物使用など

加重類型

強盗強姦、営利目的による覚せい剤の輸出入・製造など

予備罪

内乱予備、覚せい剤の輸出入・製造の予備など

準備罪

通貨偽造等準備など

組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定し難い犯罪

看守者等逃走援助、酒酔い運転等、船舶に危険がある場合における船長の処置義務違反など

 

8つの類型を除外した理由を推測してみました。

 

・過失犯(不注意によるもの):共謀(計画)することが不可能。

 

・独立未遂犯 (犯罪に着手したけれど遂げずに終わったことを、独立した犯罪として罰するもの):実行をめざした犯罪の共謀罪で十分。

  

・結果的加重犯(犯罪を実行したことによって、思ってもいなかった重大な結果が起きた場合、それを罰するもの):実行をめざした罪の共謀罪で十分。

 

・条約上の義務無し(すでに陰謀罪や共謀罪が定められている罪):同じものをつくる必要はない。

 

・加重類型(犯罪を実行する人の身分や犯罪実行の目的などによって、同じ犯罪を犯しても罰を特別に重くするもの):土台となる罪の共謀罪で十分ということか。しかし、加重類型のほうを共謀罪の対象にして土台となる罪を対象から除外した場合もある。

 

・予備罪 (犯罪の着手に至る前の準備段階を罰するもの):実行をめざした罪の共謀罪で十分。

 

・準備罪( 犯罪の着手に至る前の準備段階を罰するもの):実行をめざした罪の共謀罪で十分。

 

・組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定し難い犯罪選定基準が曖昧で、自民党法務部会で、法案成立後に対象犯罪を増やす法改正がなされるのではと疑われかねないと指摘された項目。

 


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除外された犯罪名リスト(一部)
共謀罪の対象から除外された罪のうち、あきらかな「過失犯、未遂犯、結果的加重犯、予備罪、準備罪、陰謀罪や共謀罪があるもの」以外のものを抜き出してみました。
法務省の分類に沿えば、「加重類型」か「組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定し難い犯罪」にあたるはずのものです。
(ここでいう「組織的犯罪集団」とは、「結合関係の基礎としての共同の目的が共謀罪の対象となる罪を実行することにある団体」です。いわゆる暴力団やテロ組織だけを指すわけではありません)
除外された犯罪名リスト(一部).pdf
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法律名

罪名

刑罰

特記事項

参考

刑法

第96条の5

加重封印等破棄等

5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金

「組織的な封印等破棄」(組織犯罪防止法第3条1号)「組織的な強制執行妨害目的財産損壊等」(同第3条2号)「組織的な強制執行行為妨害等」(同第3条3号)「組織的な強制執行関係売却妨害」(同第3条4号)

 

第96条「封印等破棄」第96条の2「強制執行妨害目的財産損壊等」第96条の3「強制執行行為妨害等」第96条の4「強制執行関係売却妨害」は3年以下の懲役で対象外。「組織的な…」は加重類型で5年以下の懲役となり、対象にすることが可能となった。

 

 

報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第96条から前条までの罪を犯した者」

第101条

看守者等による逃走援助

1年以上10年以下の懲役

法務省の説明では「組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定し難い罪」の例として挙げられている

「法令により拘禁された者を看守し又護送する者がその拘禁された者を逃走させたとき」

第109条第2項

自己の所有に係る非現住建造物等放火

6月以上7年以下の懲役

 

 

第114条

消火妨害

1年以上10年以下の懲役

 

 

第115条

差し押さえ等に係る自己の物に関する特例

1年以上10年以下の懲役又は10万円以下の罰金

 

 

第121条

水防妨害

1年以上10年以下の懲役

 

 

第138条

税関職員によるあへん煙輸入等

1年以上10年以下の懲役

136条「あへん煙輸入等」137条「あへん煙吸食器具輸入等」139条第2項「あへん煙吸食のための場所提供」は対象

税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したとき」

第154条

詔書偽造等

無期又は3年以上の懲役

 

 

第164条

御璽偽造及び不正使用等

2年以上の有期懲役

 

 

第171条

虚偽鑑定等

3月以上10年以下の懲役

169条「偽証」は対象

「法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたとき」

第172条

虚偽告訴等

3月以上10年以下の懲役

 

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者」

第178条の2

集団強姦等

6月以上10年以下の懲役

177条「強姦」178条「準強制わいせつ及び準強姦」は対象

 

第186条第2項

賭博開帳図利

3月以上5年以下の懲役

「組織的な賭博開帳図利」は対象(組織犯罪処罰法第3条6号)

 

第194条

特別公務員職権濫用

6月以上10年以下の懲役

「組織的な逮捕監禁」は対象(組織犯罪処罰法第3条8号)

裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したとき」

第195条

特別公務員暴行陵虐

7年以下の懲役

 

裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたとき」「法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたとき」
陵虐:暴行以外の方法によって精神的又は身体的に苦痛を与える行為。相当の飲食物を与えない、睡眠を妨げる、全裸にして羞恥心を抱かせる等。(『法律用語辞典』有斐閣)

第197条第1項後段

受託収賄

7年以下の懲役

第1項前段「収賄」、第2項「事前収賄」、第197 条の2「第三者供賄」第197条の3「加重収賄及び事後収賄」第197条の4「あっせん収賄」は対象。第198条「贈賄」は3年以下の懲役なので「組織的犯罪集団」認定のみの対象
★「収賄」を共謀罪の対象とすれば「受託収賄」も対象に含まれる。他のものは要件が違う。「加重収賄」は「1年以上の懲役」で、共謀罪が成立したときの量刑が違う。

 

「公務員が、その職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、またはその要求もしくは約束をしたとき」
請託:贈賄者側から収賄者側に、職務上特定行為をするよう依頼すること。(同上)
例:政治家の口利き

第199条

殺人

死刑又は無期懲役若しくは5年以上の懲役

「組織的な殺人」は対象(組織犯罪処罰法3条7号)

 

第202条

自殺関与及び同意殺人

6月以上7年以下の懲役

 

 

第214条

業務上堕胎

6月以上7年以下の懲役

 

 

第215条

不同意堕胎

6月以上7年以下の懲役

 

 

第218条

保護責任者遺棄

3月以上5年以下の懲役

 

 

第220条

逮捕監禁

3月以上7年以下の懲役

「組織的な逮捕監禁」は対象(組織犯罪処罰法3条8号)

 

第225条の2

身代金目的略取等

無期又は3年以上の懲役

組織的な身代金目的略取等」は対象(組織犯罪処罰法第310号)

「近親者その他略取され誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又誘拐した者」

第226条の2第2項

未成年者人身買受

3月以上7年以下の懲役

第226条の2第1項「人身買受」第4項「人身売渡」第5項「所在国外移送目的人身売買」は対象

 

第226条の2第3項

加害目的人身買受

1年以上10年以下の懲役

 

 

第227条第2項

身代金目的略取等幇助目的の被略者引渡し等

1年以上10年以下の懲役

第225条の2に対応

 

第241条

強盗強姦

無期又は7年以上の懲役

 

 

第246条

詐欺

10年以下の懲役

「組織的な詐欺」は対象(組織犯罪処罰法第3条13号)

 

第249条

恐喝

10年以下の懲役

「組織的な恐喝」は対象(組織犯罪処罰法第3条14号)

 

第253条

業務上横領

10年以下の懲役

 

 

第258条

公用文書毀棄

3月以上7年以下の懲役

 

公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者」
「公務所」:官公庁その他公務員が職務を行う所

第259条

私用文書毀棄

5年以下の懲役

 

「権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者」

第260条

建造物等損壊

5年以下の懲役

「組織的な建造物等損壊」は対象(組織犯罪処罰法第3条15号)

 

第262条の2

境界損傷

5年以下の懲役又は50万円以下の罰金

 

「境界線を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者」

政治資金規正法

第23条

届け出前の寄付等

5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第25条

報告書の不提出等

5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

政党助成法

第43条

偽りその他不正な行為による政党交付金受交付

5年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金

「補助金等の不正受交付」は対象

 

第44条

報告書の不提出等

5年以下の禁錮若しくは100万円以下の罰金

 

 

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律

第33条 

不正の手段による補助金等の受交付の罪のうち、国または地方自治体の職員が係る場合

5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金

一般人による「補助金等の不正受交付」は対象

 

相続税法

第68条

偽りにより相続税、贈与税を免れる行為等の罪

10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金

所得税の不納付、所得税、法人税、消費税の脱税は対象

 

公職選挙法

第221条第2項

中央選挙委員会の委員等及び公安委員会の委員・警官等による買収・利害誘導

4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第222条第3項

公職の候補者等による買収・利害誘導

4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第222条

多數人の買収・利害誘導

5年以下の懲役若しくは禁錮

 

 

第223条第1項

候補者・当選人に対する買収・利害誘導

4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第223条第2項

中央選挙委員会の委員等及び公安委員会の委員等・警官等による候補者・当選人に対する買収・利害誘導

5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第223条第3項

公職の候補者等による候補者・当選人に対する買収・利害誘導

5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第223条の2第1項

新聞、雑誌の不当利用

5年以下の懲役若しくは禁錮

 

 

第223条の2第2項

公職の候補者等による新聞、雑誌の不当利用

6年以下の懲役若しくは禁錮

 

 

第224条の2第1項

おとり

1年以上5年以下の懲役又は禁錮

 

 

第224条の2第2項

組織的選挙管理者等によるおとり

1年以上6年以下の懲役又は禁錮

 

 

第225条

選挙の自由妨害

4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第226条

職権濫用による選挙の自由妨害

4年以下の禁錮

 

 

第229条

選挙事務関係者、施設等に対する暴行、騒擾罪

4年以下の懲役若しくは禁錮

 

 

第230条第1項

多衆の選挙妨害・首謀者

1年以上7年以下の懲役又は禁錮

 

 

第230条第2項

多衆の選挙妨害・指揮者・率先助勢者

6月以上5年以下の懲役又は禁錮

 

 

第235条の3

政見放送又は選挙公報の不法利用

5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

 

 

第237条第4項

中央選挙委員会の委員等による詐欺投票及び投票偽造、増減

5年以下の禁錮若しくは禁錮又は50万円以下の罰金

 

 

第253条

選挙人等の偽証

3月以上5年以下の禁錮